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生きることの尊さ-幽霊人命救助隊
基本情報
本のタイトル
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幽霊人命救助隊
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作者
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高野和明
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出版社
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文春文庫
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あらすじ
4人は、生まれも育ちも全く異なる「生き方」をしてきた者同士だが、唯一の共通点として、自ら命を断ち、「自殺」をしてしまったということ。
命を粗末にしてしまった4人は、神様からある指令を受ける。その指令は「自殺志願者を100人救う」こと。
かくして4人は、「幽霊」となって地上に舞い戻り、100人の自殺志願者を救うため、レスキュー活動を始めるのだった。
感想-ネタバレあり
ネタバレありと言いましても、物語の核心的な部分はネタバレしていないので、その点は安心してください。ただ、事前情報無しで読みたい方は、この先に進まないことをオススメします。
まずはこの作家、高野和明さんの小説がどれも非常に面白いわけです。
「ジェノサイド」がかなり有名のようですが、他にも「13階段」「グレイヴディッガー」など、読み始めると止まらないような作品がいくつかあります。
"いくつか"という言葉を使ったのは、この高野和明さんは、数多くの小説を書いているわけではないので、ハマってしまうとあっという間に全てを読み終えてしまうためです。
そんな小説のうちの1つがこの幽霊人命救助隊です。
基本的な展開としては、各々の理由で自殺を考えている人達を救助隊が発見し、死を考えなくなるように時には説得したり、時には人の助けを借りたりしながら(と言っても彼らは幽霊なので、この世の物に直接干渉する事は出来ませんが)、救助していくお話となっております。
この救助対象者が千差万別、実に様々な理由で自殺を考えており、借金苦やいじめ、家庭不和、病気。当事者であれば確かに自殺を考えたくなるのも納得のいくような状況下ですが、実は自殺以外にも選択肢が隠れている事が多く、「あなたは死ななくて良いんだよ」というメッセージを受け取りながら生き延びていきます。
これが難しいところで、本人は追い詰められた状況なので、視野も狭くなり、「もう死ぬしかない」と思い込んでいる事が多く、ふとした瞬間に気持ちが自殺に傾いてしまい、まるで死ぬことが最善策や救いであるかのように錯覚して死んでしまいます。
しかし、死ぬということは命の終わりなので、死んだその後に何かが出来るわけでもなく、あの世という世界があるのであれば、死後にそこに行けますが、果たしてそこで幸せに暮らせるのかどうか…。
今の社会という構造は、石器時代なんかに比べれば生きていくことを楽にしてくれているのかもしれませんが、社会の中で生きていくという別の術を身につけていなければ生きづらいのかもしれません。
また、今の時代は「生きがい」や「生きる理由」を強く求める傾向にあると思うのですが、それらを失ってしまった人たちは果たして死ねば良いのか?というとまた別問題なわけです。
新しい生きがいを見つけられなかったとしても、死んでしまえば生きがい探しをすることも出来なくなってしまうので、とにもかくにも、生きがいなんか無くとも命を続けていることに、とても大きな価値があり、命は尊いものなんだと気づかないといけないのかもしれません。
すっかり好き勝手に書いていますが、この小説を読んで私の死生観はより強固なものになって、「生きていること」が最優先であり、自殺はやめといた方が良いぞ、と思うようになりました。
まだ読んでない方は、ぜひ読んでみてください。私は何度も読み返してますが、読むたびに号泣してます。笑