孤高の人

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本のタイトル 孤高の人
作者 新田次郎
出版社 新潮文庫

紹介

加藤文太郎。
パーティを組んでの山行が常識の中で、単独行での登山を行い、数々の記録を作り上げた伝説の登山家。
実在した登山家「加藤文太郎」をモデルにして、新田次郎が書いた小説、「孤高の人」の主人公である。

と、いうことで、今回は新田次郎の「孤高の人」を読んでみました。
上下巻で約○○ページの読み応え、ボリューム感たっぷりの小説でした。
私は、通勤電車でじっくり読んでいましたが、毎日の通勤が楽しみになるような本でした。

読み方としては、ぜひともじっくり読んでもらいたいです。新田次郎さんの山の表現が実に見事で、文太郎と共に山に登っているような気持ちになりました。
山に登る文太郎と対照的に、会社での人間関係模様も描かれていて、加藤文太郎という人物をどんどん好きになっていくような小説です。

===【要注意】この先、ネタバレあり======










有名な小説という事もあって、最後の結末は知っていたんですが、結末だけではなく面白いという点と、読み進めていくうちにどんどん深みにはまっていく感覚があります。

山登りと仕事を切り離さない文太郎

加藤文太郎は、技師として働いているのですが、ある時、冬山でビバークしている最中に、新しいエンジンの機構を考え付いて、それがかなりの発明に繋がったのですが、加藤文太郎の真面目な性格から、例え山に登っていたとしても、地上の事を実は忘れておらず、頭の片隅に置いているからこそ、山でヒントが出てきたときにしっかりと捕まえてチャンスを逃さなかったようです。私の場合、山に登っている時はボケーっとしていることが多いので、文太郎を見習いたいと思います。。。
更に、文太郎は有給を登山に使い切ってしまうのですが、登山で休んだ分、仕事ではさらにきっちりと働き、なんなら残業もして成果を出していく真面目さがあります。自分がやりたい事のために、甘えない姿勢はとても素晴らしく、私も見習いたいです。

宮村

劇中で加藤文太郎最後の登山になるのが、北アルプス冬期北鎌尾根登山です。その際に宮村という男とパーティを組んで登山します。宮村は、加藤文太郎に憧れて山に登り始め、文太郎を北鎌に誘うのですが、まぁ身勝手な男で、加藤文太郎が遭難死する原因を引き寄せて行きます。
一応、モデルがいるようですが、モデルとなった実際の人物像とはかけ離れており、また、小説内では宮村が遭難の原因を作っていきますが、実際は違うようなので、小説はあくまでも創作であるという認識で読むべきですね。
読んでいる間は、なんとか文太郎が思い立ってこの宮村から離れてくれないか、と何度も願いましたが、願いかなわず。。。
加藤文太郎は亡くなってしまいます。
最後「花さん、今帰ったよ」は泣いちゃいましたよね。

まとめ

結局のところ、山というのは自己責任の世界でもあるので、やはり最終的な判断は人に任せず、自分でしっかりとした軸を持って行うべきだ、というところでしょうか。
文太郎は、日々の生活の中でも自分の体の限界などを調べていて、その判断軸を元に山で一人で全てを判断してきていたので、どんな状況下でも安全が確保できていたのですが、最後の宮村との登山では、その基準がぶれてしまったんですよね。宮村がそう言うなら大丈夫だろう、というような判断をしているように私には見えました。

と言ったところで、加藤文太郎のファンになった私は、山好きの方にこの小説をお勧めします。特に、じっくりと山の雰囲気に触れたい方にオススメの一冊です。

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